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診療概要
道北、道東における耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療の基幹施設である当科は耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域全般の疾患を対象とした診療を行っております。特に、外科的治療として聴力改善手術および頭頸部腫瘍手術を精力的に行い、多くの症例を治療しております。外来受診の流れ、外来診療担当医、入院退院に関しましては大学病院ホームページをご参照ください。
許認可されている施設基準
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日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設(日本耳鼻咽喉科学会認定)
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日本気管食道科学会認定専門医研修施設(日本気管食道科学会認定)
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日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医制度指定研修施設(日本頭頸部外科学会認定)
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社団法人日本アレルギー学会認定施設(日本アレルギー学会認定)
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日本内分泌・日本甲状腺外科学会専門医制度認定施設(日本内分泌外科学会認定)
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人工内耳手術認可施設(北海道庁認定)
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鼓室形成手術等の施設基準(年間50例以上:厚生労働省認定)
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補聴器適合検査判定施設(日本耳鼻咽喉科学会認定)
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新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関(日本耳鼻咽喉科学会認定)
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鼻副鼻腔悪性手術等の施設基準(年間10例以上:厚生労働省認定)
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上顎骨悪性腫瘍手術等の施設基準(年間5例以上:厚生労働省認定)
各疾患における診療の概要
1.頭頸部腫瘍(頸部、顔面、舌・口腔、唾液腺、甲状腺・副甲状腺の外科)
当科では耳科手術とともに頭頸部外科手術も精力的に行っています。頭頸部腫瘍に対する手術件数は年間130例に及び、鼻副鼻腔悪性手術、上顎骨悪性腫瘍手術等の施設基準の認定を受けています。
また、(内視鏡補助下)甲状腺手術、(内視鏡補助下)唾液腺手術例も他院からの紹介が多く併せて年間100例以上施行しています。内視鏡補助下の唾液腺手術は北海道内で実施している施設は当院のみであり、全道から患者さんの紹介をいただいております。
頭頸部癌手術では口腔や食道の再建手術が必要ですが、当科では顕微鏡下で微小血管吻合を行う遊離皮弁再建を行っています。また、当科は癌患者さんの発声や嚥下機能を温存する治療として超選択的動注化学療法・放射線同時併用療法を施行している道北・道東地方では唯一の施設です。
腫瘍分子生物学、腫瘍免疫学は当科の大きな研究テーマのひとつであり、遺伝子療法や免疫療法の臨床応用を目指した研究が盛んです。
2.唾液腺唾石症に対する内視鏡下摘出

唾液腺唾石症は唾液腺管に結石ができ、唾液の流出が妨げられるため摂食時の唾液腺腫脹、疼痛、それに続発する感染をきたす疾患であります。当科では、唾液腺管開口部から細い内視鏡を挿入し、唾石を確認、内視鏡のチャネルからバスケットカテーテルやレーザープローベを挿入し唾石を摘出、または破砕する唾液腺内視鏡手術を2010年10月より施行しております。本手術は従来の顎下腺摘出による頸部切開を回避できるため、審美的に優れた方法です。よって、特に若年者など、審美性を求める方々に好評を頂いております。北海道で本術式が可能なのは当院のみになりますので、札幌を含む全道各地から患者さんの紹介をいただいております。
3.内視鏡補助下甲状腺手術 VANS
甲状腺疾患に対する手術は、首の中央に6-8cm程度の皮膚切開をして行うのが一般的です。しかしながら甲状腺の病気は女性に多く、首の常に見える場所に残る手術の傷は美容上切実な問題となることがあります。そこで当科では、首に傷を残さない内視鏡補助下甲状腺手術(Video-assisted neck surgery, VANS法)を2009年より導入しており、2024年までに500例以上の手術を施行しており、頭頸部外科の施設では日本有数の症例数があります。開襟のシャツで隠れる鎖骨の下に3 cm程度の皮膚の皺に沿った皮膚切開を行い、首には内視鏡を挿入する5 mmのわずかな切開だけを作製します。この切開部位より内視鏡を挿入し、側方から皮膚を器械で持ち上げ、適切なエナジーデバイスを用いてハイビジョンモニタ下で施行しています。
4.扁桃病巣疾患(掌蹠膿疱症、IgA腎症など)
扁桃の免疫学的異常が原因となり、異なった臓器に発生する疾患を扁桃病巣疾患と呼び、その代表的な疾患として掌蹠膿疱症、IgA腎症、胸肋鎖骨過形成症が挙げられています。当科では当院皮膚科、腎臓内科、膠原病内科と協力のもと本疾患の治療に扁桃摘出術を行い、高い改善率を得ています。特にIgA腎症の治療に関しては腎臓内科と共同で扁桃摘出術+ステロイドパルス療法を行っており非常に有効率が高くなっております。
さらに最近ではアナフィラクトイド紫斑病、IgA血管炎、尋常性乾癬、ベーチェット病、リウマチ性反応性関節炎で特に上気道炎の際に症状が悪化する症例では扁桃摘出術が有効であることを見いだし、本症が疑われる症例に積極的に手術を施行しています。 毎週木曜日午後の扁桃専門外来にて治療前の診断、治療後の経過観察を行っています。
当科の教授である髙原は日本を代表とする扁桃病巣疾患のエキスパートであり扁桃病巣疾患診療の手引き作成委員会の委員長を務めています。
5.難聴
当科では難聴者に対する聴力改善手術を積極的に行っています。その手術件数は年間50例以上に達し、道北・道東地方では唯一、鼓室形成手術等の施設基準をクリアーしています。高度難聴者に対する人工内耳手術に関しても道北・道東地方でいち早く人工内耳埋込術の施設基準に適合し、多数の手術件数を有しています。
当科は旭川では唯一、日本耳鼻咽喉科学会認定の補聴器適合検査判定施設、新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関に適合しており、補聴器・難聴児専門外来(第1、3、5 金曜日午後)を開設し、成人のみならず乳児に対する補聴器の適応判定・調整を行っています。
中耳腔に水(滲出液)がたまり聞えが悪くなる、滲出性中耳炎(OME)に対して専門外来を開設しております。鼓膜をよく観察し、聴力検査や鼓膜の動きを調べる検査などを行い、滲出性中耳炎なのかどうか診断します。治療は、鼓膜切開・チューブ留置療法・薬による治療等症状にあわせて行っております。
6.ANCA関連血管炎性中耳炎
成人の難治性中耳炎の中で、当科では全身の血管炎を引き起こすANCA関連血管炎の部分症状としての中耳炎を「ANCA関連血管炎性中耳炎」として世界に先駆けて提唱しました。当科では本中耳炎に対して、耳鼻咽喉科的立場から、その専門性を生かして積極的に診断・治療を行っています。
7.めまい、耳鳴、顔面神経麻痺
めまい専門外来は、毎週金曜日午後行われています。数多くの神経耳科学的検査(純音・語音聴力検査、聴性脳幹反応、耳音響放射、電気眼振図、赤外線ビデオ眼振計、重心動揺計など)を駆使して良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎などの内耳性めまいの診断、治療、中枢性めまいの鑑別を行っています。良性発作性頭位めまい症では、積極的に浮遊耳石置換法などの理学療法を取り入れています。また、慢性めまいは、薬物治療には限界があり、薬物療法に抵抗するめまいにはめまいリハビリを指導し成果を得ています。
耳鳴りの治療は、原因がわかっている場合は、それぞれの原因を除くことがなされます。注目されている耳鳴り治療法の1つにTRT(tinnitus retraining therapy;耳鳴り順応療法)療法があり、当科でも行っています。
末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺、ハント症候群)に対しては、保存的治療(ステロイド、星状神経節ブロック、高気圧酸素療法)と難治例に対する外科的治療(顔面神経減荷術)を行っています。
8.アレルギー性鼻炎、花粉症、副鼻腔炎
当科では、シラカンバ花粉症の疫学研究、新しいワクチン療法の研究を行っており国内外から高い評価を受けている。
鼻アレルギー専門外来(毎週金曜日午後)にて専門医の立場からガイドラインに沿った治療を行っている。ダニによる舌下免疫療法、本州に戻る方のためのスギ花粉による舌下免疫療法、入院でのレーザー手術、後鼻神経切断術、鼻内視鏡手術も積極的に行っている。
9.喉頭麻痺、音声・嚥下障害
喉頭麻痺に対する機能回復は当科の研究テーマの一つです。
一側性麻痺による嗄声に対してはコラーゲン注入、筋膜移植術、甲状軟骨形成術、両側性麻痺に対してはEjnell法などを積極的におこなっています。
当科には「声」の病気を専門的に診察する音声外来があります。まず、電子スコープ、ストロボスコピー、音声機能検査、コンピュータによる音響分析などを使いながら、声が悪くなっている原因を詳しく調べます。そして、治療のために手術が必要な場合には、それぞれの症例に応じて声を良くするための音声外科手術を行っています。
嚥下障害のある患者には、内視鏡や造影による嚥下動態検査を駆使した診断をおこなっている。手術治療および嚥下機能回復のリハビリまで一貫した治療をおこない、患者のQOLの維持、回復に努めている。
10.睡眠時無呼吸症候群
当科では上気道の生理学的研究が国内外から高く評価されており、本症の診断と治療に応用している。
睡眠時無呼吸症候群外来(毎週金曜日午後)を開設し、アプノモニターによるスクリーニングを行っている。本症が疑われた患者には外来で機器を貸し出すことによる簡易検査、もしくは短期入院でポリソムノグラフィーによる精密検査で病態診断を行い、治療は手術のみならず、CPAP、ダイエット指導などシステムを確立している。
診療実績
当科における、入院患者数・手術件数・外来患者数の2000年からの年度毎の推移をお示しします。



