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喉頭麻痺の治療
喉頭麻痺に対する治療方針は原因となっている病気に対する治療が最優先されます。その上で麻痺が長期にのこる場合には症状に応じて適切な治療をおこないます。誤嚥のひどい喉頭麻痺の場合は、声を出すことと口から食事をすることのどちらかを犠牲にせざるを得ないこともあり、治療方針の決定には患者様、ご家族と十分な相談が欠かせません。
1.薬物治療
頸部外傷による麻痺・挿管による麻痺・原因の分からない特発性麻痺などで、発症後間もないものに対してはステロイド剤やビタミン剤などが用いられます。
2.手術治療
麻痺が一側の場合は声のかすれ(嗄声)を改善する目的で麻痺した声帯を真ん中に移動させるための手術がおこなわれます。これには声帯の粘膜下にコラーゲンや筋膜、脂肪などを注入する声帯内注入術、声帯の外側から軟骨やシリコンブロック、ゴアテックスなどを用いて声帯を真ん中に押し出す甲状軟骨形成術、声帯に付着している軟骨を引っ張ることで声帯を真ん中に移動させる披裂軟骨内転術などがあります。これとは逆に、両側の麻痺の場合は呼吸困難が主な症状になるために、声門を拡げることが手術の目的となります。声帯を外側に引っ張る声帯外方移動術、声帯の一部を切除するレーザー手術、麻痺している喉頭よりも下方で気管に穴をあける気管切開などがあります。
3.リハビリテーション
喉頭麻痺による音声障害、嚥下障害の治療では薬物治療や手術だけではなくリハビリテーションも重要です。また嚥下障害がある場合には、飲み込みやすい食事内容や食事の姿勢、食事しやすい食器などにも気を配ることが重要で、患者様自身の努力に加えてご家族の協力が不可欠です。
4.嚥下障害に対する手術治療
嚥下障害に対する手術治療は喉頭の音声機能を保存する治療と、音声機能を犠牲にして口から食べることを可能にする手術とに大別されます。前者としては喉頭挙上術、輪状咽頭筋切断術が主なもので、後者としては喉頭閉鎖術、喉頭気管分離術、喉頭摘出術などがあります。
5.音声外科手術
当科には「声」の病気を専門的に診察する音声外来があります。まず、電子スコープ、ストロボスコピー、音声機能検査、コンピュータによる音響分析などを使いながら、声が悪くなっている原因を詳しく調べます。そして、治療のために手術が必要な場合には、それぞれの症例に応じて声を良くするための音声外科手術を行っています。当科でおこなっている音声外科手術は喉頭微細手術と喉頭形成術があります。
1)喉頭微細手術喉頭微細手術は、声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、声帯嚢胞など、声を出す声帯そのものに病変がある場合におこなわれる手術です。病変が非常に小さいので、手術は顕微鏡下での操作が必要になり、通常は全身麻酔でおこないます。
2)喉頭形成術
喉頭形成術は、声帯麻痺(声帯が動かなくなってしまう)で声が悪くなっている場合におこなう手術です。声帯麻痺の原因は様々ですが、甲状腺癌,食道癌,肺癌,大動脈瘤,脳腫瘍,頸部腫瘍などの術後性麻痺や,原因不明の声帯麻痺の場合もあります。喉頭形成術は麻痺して動かなくなってしまった声帯を中央に押し出すことで、声を良くする手術です。手術は局所麻酔で、頸に6センチ程の横切開をいれておこないます。手術中に声を出してもらい、声が良くなるのを確認して手術を終えます。